「職場でAさんはこう言うけれど、Bさんは全く逆のことを言っている……」そんな板挟みの状況で、どちらの味方もできずにモヤモヤした経験はありませんか。
相手の気持ちを想像できるからこそ、どちらの言い分も理解できてしまい、身動きが取れなくなってしまうんですよね。
この記事では、あえて「ラフな対話」を取り入れることで、複雑な人間関係のなかで自分らしく振る舞うためのヒントをお伝えします。
読み終える頃には、張り詰めていた心が少しだけ軽くなり、周囲との向き合い方に新しい選択肢が見つかるかもしれません。
先輩と後輩の真逆な意見に、お互いの愚痴をこぼされた経験
「どちらも正しい」からこそ動けなくなる違和感
実は私自身、以前の職場で先輩と後輩の間に挟まれ、どうにも身動きが取れなくなった経験があります。
あるプロジェクトに所属していた時のこと。「プランAを実行すべきか、やめるべきか」という議題が上がりました。その時、先輩は「Aはやらない方がいい」、後輩は「絶対にAをやりたい」と真っ向からスタンスが分かれてしまったのです。
会議の場では、どうしても先輩の意見が強くなりがちです。「やりたい」と主張する後輩に対し、「それは難しいんじゃないか」という先輩の意見が乗り、議論は完全に平行線。周りもどうフォローすべきか分からず、議題がまとまらないまま重い空気で会議が終わってしまいました。
このように、職場で意見がぶつかり合っているとき、当事者ではないのになぜか苦しくなってしまうことはありませんか。先輩の言い分もわかるし、後輩の熱意ももっともだと思える。そんな「どちらの視点にも立ててしまう」優しさを持つ人ほど、心がざわつく場面が多くなります。
相手の感情を拾いすぎてしまう自分への疲れ
当時の私の悩みは、会議の後も続きました。先輩が私に個別に話しかけてきて、こうこぼしたのです。
「後輩のあの意見はどうかと思う。
今までうちの会社がやってきた歴史ややり方を大きく変えるようなことをすると、リスクが高すぎてプロジェクトが失敗するんじゃないか」
一方で後輩はといえば、Aをやりたいという思いだけでなく、頭ごなしに反対してくる先輩に対し
「いつも私の意見を否定してくる。私が嫌いなんでしょうね。」
と言います。先輩の態度や言い方が気に食わないようで、なぜ先輩がリスクを懸念しているのか、その背景を理解しようとする状態には至っていませんでした。
それぞれから不満を聞かされた私は、一時期完全に両者の意見の「板挟み」状態になり、「私がなんとかして間を取り持たないと」と一人で焦っていました。
もし今、あなたも当時の私と同じように焦りを感じているなら、ここで一度落ち着いて考えてみましょう。
板挟みになっているとき、私たちは無意識に「自分が問題を解決する責任」を感じてしまいます。しかし、意見の食い違いは本来、その人たち自身の課題です。あなたが一人で全てを背負う必要はない理由に気づくことが、この重たい違和感を手放し、心を軽くする第一歩になります。
それでも気になるというあなたは、あなたが周囲の感情の波を敏感にキャッチしすぎているサインです。双方の不満や怒りを自分のことのように背負い込んでしまうため、知らず知らずのうちに心が消耗してしまうのです。
とても大変な立場だとは思いますが、それほどあなたが心優しく、「チームとしてプロジェクトを成功させるために大切なことだ」と理解しているのだと私は思います。そのような役割が居ないとチームが分裂したり、高い水準での成功は得られないでしょう。
2.複雑な人間関係の中で自分らしく振る舞うための「ラフな対話」とは
言葉の裏側に隠れた「共通の願い」を探してみる
価値観の違いからくる意見の衝突を目の当たりにすると、どうしても「対立」という言葉が浮かびます。しかし、少し視点を変えてそれぞれの主張の「根底にあるもの」を探ってみると、意外な共通点が見えてくることがあります。
例えば、「やり方」は違っていても、実はどちらも「このプロジェクトを成功させたい」「お客様に喜んでほしい」という共通のゴールを持っていることは少なくありません。表面的な言葉のぶつかり合いではなく、その奥にある願いに目を向けることで、冷たかった違和感が少し和らいでいきます。
心理的な距離を縮める「ラフな場所」での小さな会話
では、どうすればその「本音」を引き出すことができるのでしょうか。実体験から言えるのは、会議室で机を挟んで向き合うよりも、日常の「ラフな空間」を上手に使うことの有効性です。
改まった場所では、どうしても「建前」や「正論」が先行してしまいます。しかし、緊張感のない場所でなら、ポロリと本音がこぼれる瞬間があるものです。
「ただ聴く」機会を作るのに、特別な時間は必要ありません。
- 休憩室に向かうちょっとした道すがら
- 帰り支度をしているタイミング
- コピー機の前で偶然立ち止まった瞬間
数分だけ言葉を交わす。
こうした日常の余白で生まれる等身大のコミュニケーションこそが、お互いの警戒心を解き、安心できる関係性を築くための最も強力なプロセスになります。
例えば先輩に対して、こう声をかけてみます。
「そういえば、あの件ちょっと大変そうですね。やっぱり辞めた方が良いと思いますか」
これはあえて“辞める”という選択肢を出すことで、先輩のやりたい気持ちを聞いてみます。
やりたければ「辞めたい訳じゃないけど」と言い、本当に辞めたい場合は「だって・・・」などと理由を続けてくれるでしょう。
そこから理由を紐解いたり、その意見の背景を聞き取ったりするのです。
次に後輩には、
「先輩の意見もきついよね。どうしてそんなことを言うんだろうね。」
こう聞いてみるのはどうですか?
まずは後輩のことが嫌いとは思っていないことを納得してもらうのです。一度、後輩には落ち着いてもらい、それからAのプロジェクトをやりたい理由や考えていることを一緒に組み立ててみるのです。
あなたが聞いた先輩の納得するポイントを抑えながら、一緒に考えてみるのです。
頼りにされているあなただから出来る技
「いつも板挟みにされる」と思うあなたは、周りから頼りにされているからです。
自分の意見を聞いてくれるあなたに安心感を覚えているため、その機会を活用して「共通の願い」を探し出してみましょう。
人間関係において、誰もが納得する「完璧な正解」を見つけるのは至難の業です。大切なのは、正論で相手を論破することではなく、双方が「自分の意見を聞き入れてもらえた」という安心感を持つことです。
本音を話し合える土壌があって初めて、人は相手の意見にも耳を傾けようと思えるようになります。
3. 自分の役割を少し変えて、心を整える
仲裁するのではなく、ただ「聴く」という選択肢
板挟みになったときの自分の役割を、「解決する人(仲裁者)」から「ただ聴く人」へとシフトしてみませんか。
「そうなんですね」「そんな風に感じていたんですね」と、ただ相手の言葉を受け止めるだけ。無理にアドバイスをしたり、両者を説得しようとしたりする必要はありません。「自分の話をフラットに聞いてくれる人がいる」という事実だけで、当事者の心は驚くほど救われるものです。
多様性を受け入れるための、自分自身の「心のゆとり」の守り方
色々な人がいて、色々な意見がある。その多様性を職場で受け入れていくためには、何よりもまず「あなた自身の心のゆとり」が守られていることが大前提です。
誰かの感情に巻き込まれそうになったら、一度深く深呼吸をして、「私はただ、話を聴くだけで十分だ」と自分に語りかけてみてください。焦らず、自分のペースで関係性を紡いでいくこと。それが結果的に、周囲にとっても一番の安心感につながっていくはずです。
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『わたしのワンピース』が描く、変化を「着こなす」豊かさ
板挟みにされて心が疲弊してきたときに、ぜひ開いてみてほしい一冊の絵本があります。にしまきかやこさんの『わたしのワンピース』です。
有名な作品なのでご覧になられたことがある方もいらっしゃるかと思います。
物語は、真っ白なウサギが真っ白な布で自分のワンピースを縫うところから始まります。そして、そのワンピースを着てお花畑を散歩すると、なんと服の柄が「花模様」に変わるのです。雨が降れば「水玉模様」に、草の実が落ちてくれば「草の実模様」に。背景が変わるたびに、ウサギのワンピースはその景色を写し取るように鮮やかに変化していきます。
この絵本は、ただ不思議で可愛いだけでなく、「多様性を受け入れることの豊かさ」を私たちにそっと教えてくれます。
多様な意見を「着こなして」ラララン ロロロンと歩く
職場で飛び交うさまざまな意見や、全く違う価値観。それを真っ向から否定して跳ね返すのではなく、まずはウサギのワンピースのように「自分の身にまとってみる(理解してみる)」と捉えてみてはいかがでしょうか。
ウサギは、柄が変わることを嫌がりません。それどころか、それぞれの想いや考えをまるで着こなすかのように、「ラララン ロロロン」と歌を口ずさみながらその状況を楽しんで歩いていきます。
色々な背景や考え方があることをまず受け入れ、それを着こなしてみる。そんなウサギの軽やかな姿は、板挟みになってガチガチに固まっていた私たちの気持ちを、ふっと和らげてくれます。
板挟みの「特等席」から共通点を見つけ出す
もちろん、「板挟みの状態を楽しむ」なんて言うと、かなりハードルが高い発想に聞こえるかもしれませんね(笑)。現実の職場では、苦しいことのほうが多いはずです。
しかし、板挟みになっているからこそ見える景色もあります。Aという意見と、Bという意見。その両方の背景を知っているあなただけの「立ち位置」は、実は解決の糸口を見つけるための特等席でもあるのです。
どちらかの味方になる必要はありません。あなたのその立ち位置を活用して、両者の「共通点」を見つけ出し、一緒に解決策を探っていく。それは、意見が対立している当事者同士にはできない、真ん中にいるあなただからこそ「できること」の一つなのだと思いませんか?


